収入保障保険とは?必要となる年金月額の目安をシミュレーション

子どもが生まれると、「もし自分に万が一のことがあったら、家族は生活していけるだろうか」という不安を感じる方は少なくありません。
毎月の生活費・住居費・教育費など、遺された家族に必要な費用を考えると、どのくらいの保障を準備すればよいのか、判断が難しい場合があります。
本記事では、収入保障保険の仕組みや、年金月額を検討する際の考え方の一例について、シミュレーションを交えて解説します。
良い点と注意点の両方を踏まえ、ご自身の状況に合った備えを考える際の判断材料としてご活用ください。
収入保障保険とは

収入保障保険とは、被保険者が保険期間中に死亡した場合や、商品所定の高度障害状態に該当した場合に、受取人が保険期間満了時までを基本として年金形式で保険金を受け取れる保険です。
毎月の給付型であるため、家族の生活費を継続的に補うという用途に活用されることがあります。
収入保障保険の仕組み
収入保障保険は、保険期間の経過とともに受け取れる保険金の総額が徐々に減少していく仕組み(逓減型)をとっています。
時間の経過とともに将来必要となる生活費の総額が減っていくという考え方を踏まえた設計とされることが一般的です。保険期間が長く残っているほど受け取れる総額は大きくなり、満了が近づくにつれて総額は小さくなります。
以下は、保険期間60歳満了・年金月額20万円に設定した場合の例です。
- 35歳で死亡した場合:残り25年分(月20万円×300ヶ月=合計6,000万円)に相当する年金総額が想定されます
- 55歳で死亡した場合:残り5年分(月20万円×60ヶ月=合計1,200万円)に相当する年金総額が想定されます
※実際の受取額は支払条件や受取方法などの契約内容により異なります。
このように、亡くなる時期によって受取総額が変動する仕組みが、収入保障保険の特徴の一つです。
受取方法は、契約内容に応じて、年金受取や一括受取などを選択できる場合があります。
- 年金受取:毎月定額を受け取る方法
- 一括受取:商品によっては、一部をまとめて受け取り、残金を年金で受け取る形式や、全額を一括で受け取る形式を選択できる
ただし、一括受取の場合は、年金形式で受け取る総額よりも受取総額が少なくなる場合があります。
さらに、収入保障保険には、所定の支払保証期間が設けられている商品が一般的です。これは、保険期間の終了直前に万が一のことがあった場合でも、所定の保証期間中は年金が支払われる仕組みです。
収入保障保険と定期保険・就業不能保障保険との違い
収入保障保険は家族の生活を支えるという目的において「定期保険」や「就業不能保障保険」と共通点があるため、検討時に混同されるケースも少なくありません。しかし、給付の仕組みや対象リスクが明確に異なります。
収入保障保険と定期保険・就業不能保障保険との違いを整理します。
収入保障保険と定期保険の違い
定期保険は保険期間中にいつ亡くなっても一定の金額(一時金)が支払われるのに対し、収入保障保険は年金形式で受け取ることを基本とし、受取総額が徐々に減少する点が異なります。
比較項目 | 収入保障保険 | 定期保険 |
給付形式 | 年金 | 一時金(一括) |
保険金の受取総額 | 残存期間に応じて変動 | 契約時から一定 |
保険料水準 | 比較的抑えられる傾向がある | 収入保障保険より高くなる傾向がある |
主な用途例 | 毎月の生活費の補てん | 葬儀費用・遺された家族の当面の資金 |
解約返戻金 | 原則としてなし | 原則としてなし |
収入保障保険と就業不能保障保険の違い
就業不能保障保険は、死亡ではなく病気・ケガで働けない状態(就業不能状態)になった場合に、給付を受けられる保険です。本人と家族の生活をサポートする備えとして検討されることがあります。
収入保障保険が死亡・高度障害を主な対象とするのに対し、就業不能保障保険は働けない状態を対象とする点が大きな違いです。それぞれ対象リスクが異なるため、必要に応じて両者を比較検討することも考えられます。
ご自身の家族構成や現在の収支状況に合わせた目安となる保障額を考える際は、必要に応じて専門家へ確認し、客観的な数値を把握するのも一つの方法です。
収入保障保険の年金月額の決め方と目安

年金月額の目安は、「遺族が必要とする生活費」から「遺族の収入」を差し引いた不足分を基準に考える方法が一つの考え方として挙げられます。遺族の収入には、就労で得る収入のほか、遺族年金や児童手当などの公的給付が含まれます。
なお、必要額は世帯の支出状況・住宅形態・子どもの人数・配偶者の就労状況などによって大きく変わります。
以下のシミュレーション例はあくまで参考値であり、公的保障の受給要件や家計状況、契約内容などにより実際の金額は異なる点にご留意ください。
会社員の夫が死亡した場合のシミュレーション
会社員(厚生年金加入者)に万が一のことがあった場合、遺族は遺族基礎年金と遺族厚生年金を受け取れる可能性があります。また、子に対する児童手当を受け取れる場合があります。
なお、中高齢寡婦加算は、遺族基礎年金を受け取っている間は原則として併給されません。そのため、世帯の支出に対して不足が生じるケースが考えられます。
以下は、52歳の会社員の夫に万が一のことがあった際の、毎月の収支目安を算出した一例です。
【シミュレーションの前提条件】
- 家族構成:夫(52歳・月収30万円)、妻(48歳・パート)、子(16歳)1人の3人世帯
- 支出(毎月の生活費):約30.8万円(家計調査を参考にした概算)
【公的保障・手当の受取目安(月額)】
- 遺族基礎年金:約8.9万円
- 遺族厚生年金:約3.0万円
- 児童手当:1万円
- 合計:約12.9万円
【毎月の不足額の計算】
約30.8万円(支出)-約12.9万円(公的保障等の合計)=約17.9万円
妻の勤労収入(パート代など)を加味しない場合、このケースでは毎月約17.9万円の不足が生じると考えられます。この不足分を補う金額を考えるうえで、収入保障保険の年金月額は、15万円~20万円程度が目安となるケースもあります。
※あくまで一例であり、年齢・貯蓄・住宅ローン等により大きく異なります
参考:統計局「家計調査報告」
参考:日本年金機構「遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)」
参考:日本年金機構「遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)」
参考:こども家庭庁「児童手当制度のご案内」
自営業者の夫が死亡した場合のシミュレーション
自営業者(国民年金第1号被保険者)に万が一のことがあった場合、遺族が受け取れる公的年金は原則として遺族基礎年金のみとなります。会社員のような遺族厚生年金がないため、生活費の不足額が大きくなりやすい点に注意が必要です。
【シミュレーションの前提条件】
- 家族構成:夫(52歳・自営業)、妻(48歳・パート)、子(16歳)1人の3人世帯
- 支出(毎月の生活費):約30.8万円
【公的保障・手当の受取目安(月額)】
- 遺族基礎年金:約8.9万円
- 児童手当:1万円
- 合計:約9.9万円
【毎月の不足額の計算】
約30.8万円(支出)-約9.9万円(公的保障等の合計)=約20.9万円
妻の勤労収入を加味しない場合、このケースでは毎月約20.9万円の不足が生じると考えられます。会社員のケース(不足額約17.9万円)と比較すると、自営業者の場合は、公的保障が限られることから不足額が大きくなる傾向があります。
これを踏まえると、収入保障保険の年金月額は、20万円前後が目安となるケースもあります。
働き方や世帯の状況によって、万が一の際に必要となる保障額の目安は大きく異なります。ご自身のライフプランに合わせた適切な備えを把握するために、中立的な相談機関で確認する方法もあります。
参考:統計局「家計調査報告」
参考:日本年金機構「遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)」
参考:日本年金機構「遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)」
参考:こども家庭庁「児童手当制度のご案内」
収入保障保険の良い点

収入保障保険は、時間の経過とともに必要となる保障額が減っていく設計の商品が一般的である点が特徴の一つとされています。
将来、家族が必要とする生活費の総額が減少することに合わせて保障額も調整されるため、保険料の負担を抑えやすいとされる側面があります。
保険料が低めに設定されている
収入保障保険は、保険期間の経過とともに保険金の総支払額(年金総額)が減少していく仕組みのため、全期間で一定の保障を維持する定期保険と比較して、保険料が抑えられる傾向があります。
そのため、家計への負担を抑えながら、働き盛りの時期に一定の生命保障を確保するための選択肢として検討されることがあります。
ただし、実際の保険料水準は年齢や性別、健康状態、さらには特約の有無などによって変動することに留意しましょう。ご自身の条件に合った具体的な金額については、各保険会社の見積もり等で事前に確認することが大切です。
必要な生活費に基づく金額を設定できる
保険金を「毎月15万円(一例)」といった月額形式で設定できるため、遺された家族が将来の生活を具体的にイメージしやすく、家計の収支計画を考えやすいという面があります。
まとまった一時金を受け取るタイプとは異なり、大きな金額を家族自身で管理・運用する必要がないため、長期的な生活費の補てんとして用いられることがあります。
なお、設定する年金月額を決める際は、遺族年金などの公的保障や配偶者の収入、現在の生活水準などを多角的に踏まえて検討することが重要です。
ライフステージに応じた備えができる
子どもが幼い時期は将来にわたり必要な生活費が多く、成長とともにその総額は減っていくものです。収入保障保険はこうした必要保障額の変化を踏まえた設計の商品が一般的です。
保険期間中の早い段階で万が一のことがあった場合には年金総額が大きくなり、満了に近づくほど小さくなる構造は、子育て期間中の保障ニーズと対応関係を持ちやすい面があります。
一方で、こうした仕組みを持つ反面、原則として解約返戻金がない掛け捨て型であるといった注意点についても、あわせて理解しておくことが大切です。
収入保障保険の目安となる保障額や期間は、各家庭の現在の収支状況や将来のライフプランによって大きく異なります。
ご自身に合った備えの形を具体的に把握するために、中立的な相談窓口を利用することも、納得感のある選択につなげるための一つの方法です。
収入保障保険の注意点

収入保障保険を検討する際は、解約時や満了時の返戻金がない掛け捨て型である点や、死亡時期によって受取総額が変動するといった独自の仕組みを正しく理解しておくことが大切です。
こうした特徴がある一方で、貯蓄を重視する場合などには不向きな側面もあるため、自身の目的に合っているかを確認することが重要とされています。
原則として解約返戻金や満期保険金がない
多くの収入保障保険は、解約時に戻ってくるお金(解約返戻金)がない、あるいは極めて少額に設定されている掛け捨て型の商品が一般的です。
また、保険期間が満了した際にお金を受け取れる満期保険金も原則として支払われません。
支払った保険料が主として保障に対応する商品であることを理解したうえで、加入の可否を検討することが大切です。
万が一の保障だけでなく、将来に向けた貯蓄性も重視したい場合には、他の金融商品との組み合わせを検討することも選択肢の一つです。
受取時期によって年金総額が限られる
収入保障保険は、保険期間の終了間際に万が一のことがあった場合、年金を受け取れる回数が少なくなり、結果として受取総額が限られる点が特徴の一つとされています。
そのため、葬儀代などのために、いつの時点でも一定額の一時金を確保したい場合には、合わないケースもあります。
ただし、多くの商品では所定の支払保証期間が設定されており、たとえ満了直前に万が一のことがあっても、所定の期間は年金が支払われる仕組みが設けられています。
保険金は課税対象になる
収入保障保険の保険金(年金)は、受け取り方法や契約形態(契約者・被保険者・受取人の関係)によって、相続税・贈与税・所得税のいずれかの課税対象となる場合があります。
年金形式で毎月受け取る場合は、毎年受け取る年金について所得税・住民税の対象となります。
また、年金を受け取る権利自体について、契約形態に応じて相続税または贈与税の対象となる場合がある点には注意が必要です。実際の課税関係は一律ではなく、非課税部分と課税部分を区分して計算する場合もあります。
税務上の具体的な取り扱いについては、事前に税理士や所轄の税務署などの専門機関に確認する方法もあります。
参考:国税庁「No.4123 相続税等の課税対象になる年金受給権」
参考:国税庁「所得税のしくみ」
参考:国税庁「No.4402 贈与税がかかる場合」
収入保障保険の必要性が高いケース

収入保障保険は、すべての方に一律に必要なものではなく、家族構成や将来のライフプラン、現在の資産状況によって必要性が異なります。
特に、万が一の際に家計への影響が大きい世帯や、公的保障だけでは生活維持が難しいと想定される場合には、選択肢の一つとなり得るでしょう。
ご自身の生活環境が以下のようなケースに当てはまるか確認することが、必要性を考えるうえで重要です。
自分の収入で家計を支えているケース
世帯収入の大部分を一人の収入に依存している場合、その収入が途絶えることで家族の生活水準が大きく変動するリスクがあります。
遺族基礎年金や遺族厚生年金といった公的な仕組みは、家族を支える重要な柱となります。しかし、現在の支出規模や住宅ローンの有無、将来の希望する生活水準によっては、公的保障だけで生活費のすべてを賄いきれないと考えられるケースも少なくありません。
そうした不足分を補い、遺された家族がこれまでの生活を継続するための選択肢として、毎月の給付が受けられる収入保障保険が挙げられることがあります。
子どもが幼いケース
子どもが幼いほど、自立までに要する生活費や教育費の負担は大きくなるのが一般的です。
収入保障保険は、子どもの成長に合わせて必要となる保障額が段階的に減っていく仕組み(逓減型)のため、早い段階で万が一のことが起きた際には、より多くの年金総額を受け取れる可能性があります。
子育て期間中の重い負担に合わせた保障を、比較的抑えられた保険料で効率よく確保できる収入保障保険は、子どもが幼い家庭にとって選択肢の一つといえるでしょう。子どもの独立までを保険期間の目安として、子どもが幼いうちに加入を検討されるケースもあります。
自営業で生計を立てているケース
自営業者や個人事業主の方は、会社員と比べて万が一の際の公的保障が限られている点に注意が必要です。
厚生年金に加入する会社員には遺族厚生年金がありますが、国民年金のみに加入している自営業者の場合、受け取れるのは原則として遺族基礎年金のみとなります。
そのため、会社員世帯に比べて不足額が大きくなりやすい傾向にあり、民間の生命保険を活用して不足分への備えを検討する余地があります。
また、国民年金のみの加入を前提とする場合、遺族厚生年金に付く中高齢寡婦加算の対象にはなりません。
ご自身の働き方や家族構成において「具体的にいくらの保障が必要か」を把握するには、将来の収支を可視化するライフプランのシミュレーションが役立ちます。専門家のアドバイスを受けながら客観的な数値を確認することで、将来への不安を整理し、納得感のある備えを検討するきっかけになる可能性があります。
収入保障保険を選ぶ際のポイント

収入保障保険を比較・検討する際は、万が一の際の「受取額」だけでなく、以下の3つの視点で整理することが大切です。
- いつまで保障が必要か(保険期間)
- どのように支払うか(払込方法)
- 万が一の際にどう受け取るか(受取方法)
これらを自身のライフプランに照らし合わせて検討することで、家計の状況に応じて、必要な保障内容を整理しやすくなります。
保険料の支払方法
保険料の支払いには、保険期間を通じて支払う方法や、短期間で払い終える方法などがあります。家計のキャッシュフローに合わせて、月々の負担額と総支払額のバランスを考慮して選択することが大切です。
【払込期間の種類】
- 全期払い:保険期間の満了まで保険料を支払い続ける方法です。短期払いと比較して、月々の保険料を低く抑えられる傾向があります。
- 短期払い:保険期間の満了よりも前に保険料を払い終える方法です。一回あたりの負担は大きくなりますが、総支払額を抑えられる可能性があります。
また、払込回数には月払い・年払い・一括払いなどがあり、一般的にまとめて支払うほど総額は少なくなる傾向があります。ただし、まとまった手元資金が必要になるため、現在の貯蓄状況を踏まえて、支払方法を確認することが大切です。
保険期間
保険期間は、家族のライフステージにおいて「いつまで収入の補てんが必要か」という視点で設定する考え方があります。
一つの目安としては、末子が大学を卒業するタイミングや、配偶者が公的年金の受給を開始する60歳・65歳などです。
保険期間を長く設定するほど保障が続く期間は長くなりますが、比例して保険料も高くなる傾向にあります。そのため、住宅ローンの完済予定や教育資金の準備状況などを踏まえ、保障が必要な期間を客観的に見極めることがポイントです。
受取方法
万が一の際の受取方法は、基本となる年金形式のほか、状況に応じて一括受取を選択できる商品もあります。それぞれの特徴を理解し、将来の資金使途に合わせた形式を確認しておくことが重要です。
- 年金形式(月払い・年払い):毎月定額を受け取るため生活費の補填に用いられることがあり、一括受取よりも受取総額が多くなる傾向があります。
- 一時金受取(一括):年金の全部または一部をまとめて受け取る方法です。年金形式で受け取る場合の総額よりも少なくなる可能性がある点に注意が必要です。
あわせて、所定の支払保証期間の長さも比較検討の材料となります。支払保証期間が長いほど、最低限受け取れる年金額の目安は大きくなります。
収入保障保険の月額目安を把握し適切な額を設定しよう

収入保障保険は、家族のライフステージに応じた保障を考える際の選択肢の一つです。年金月額の目安を考える際は、公的保障で不足する分を客観的に算出することが第一歩となります。
月額目安は「必要生活費-公的保障(遺族年金など)」の計算式で考える方法があります。また、働き方が会社員か自営業かによって、遺族が受け取れる公的保障の額は大きく異なる点に注意が必要です。
保険料負担を抑えやすいという特徴がある一方、原則として掛け捨て型であるといった特徴についてもあわせて理解しておきましょう。さらに、受取方法や契約形態によって、税金の扱いが変わる可能性があることも考慮しておきたい視点といえます。
必要な保障内容は、家族構成や現在の収支、将来子どもにどのような教育を受けさせたいかといった希望によって、世帯ごとに異なります。
自分たちだけで詳細なシミュレーションを行うのが難しいと感じる場合は、ファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談できる窓口で、情報を確認するのも一つの方法です。






