更新日:2026年5月14日
学資保険は、子どもの教育資金を計画的に準備するための貯蓄機能を備えた生命保険です。この記事では、学資保険の基本的な仕組みや返戻率の考え方、良い点と注意点、加入のタイミングやほかの教育資金準備方法との違いを公的データを交えてわかりやすく解説します。 将来の教育費に不安を感じている方が、自分の家庭に合った備え方を考えるための参考にしてください。
学資保険は、子どもの進学時期や満期に合わせて祝い金や満期保険金を受け取れる、貯蓄性のある生命保険の一種です。まずは仕組みと、主なタイプの違いから整理します。
学資保険は、契約者(通常は親)が毎月または毎年の保険料を払い込み、子どもの進学時期や満期時に祝い金・満期保険金を受け取れる貯蓄機能を備えた生命保険です。払い込んだ保険料は、契約内容に応じて入学時の祝い金や大学進学時の満期金として、契約時にあらかじめ定めたタイミングで受け取る設計になっています。

契約に登場する主な関係者は、保険料を払い込む「契約者」、保障の対象となる「被保険者(子ども)」、祝い金や満期保険金を受け取る「受取人」の3者です。契約形態は商品や契約内容によって異なりますが、一般的には親が契約者兼受取人となり、子どもを被保険者として契約します。
保険期間は15歳・17歳・18歳・20歳・22歳満期など、商品ごとに子どもの進学ライフイベントに合わせて設定するタイプが中心です。払い込み期間は満期までの全期間にわたるタイプと、10歳や15歳など早めに払い込みを終えるタイプがあり、一般的に払い込み期間を短くするほど月々の保険料負担は大きくなる傾向があります。
受取時期についても、例えば中学・高校・大学の入学時に祝い金を分散して受け取るタイプと、大学入学時や満期時に一括で受け取るタイプがあります。
学資保険は、保障内容や設計に応じて大きく「貯蓄型」と「保障型」に分けられます。

タイプ | 主な特徴 | 向いている考え方 |
貯蓄型 | 医療保障などを付帯しない設計が一般的で、教育資金の準備に特化したタイプ | 受け取る金額とのバランスを重視したい |
保障型 | 子どもの医療保障や育英年金などを付帯できる場合があるタイプ | 保障もあわせて備えたい |
貯蓄型は保障を最小限にすることで、保障を付帯した場合と比べて受取総額とのバランスを重視した設計です。
一方で、保障型は子どもの入院・手術への備えや、契約者に万一のことがあった場合の育英(養育)年金などを特約として付帯できる場合があります。
ただし、保障を手厚くするほど保険料の一部が保障部分に回るため、貯蓄性は下がる傾向があります。どちらを選ぶかは、教育資金の準備に絞りたいのか、子どもや家計の保障も合わせて備えたいのかによって変わります。
学資保険を検討する前に、子ども1人どれくらいの教育費がかかるのかを、公的機関の調査データで確認します。幼稚園から高校までと、大学進学以降にかかる費用に分けて整理します。
文部科学省「令和5年度子供の学習費調査」によると、学校種別ごとの年間学習費総額(学校教育費・学校給食費・学校外活動費の合計)は、公立・私立で次のような金額になっています。
学校種別 | 公立(年間) | 私立(年間) |
幼稚園 | 184,646円 | 347,338円 |
小学校 | 366,599円 | 1,741,516円 |
中学校 | 542,450円 | 1,560,359円 |
高等学校(全日制) | 596,954円 | 1,179,261円 |
学校種別ごとの年間学習費は公立・私立で大きな差があり、特に小学校・中学校では私立に通う場合の学習費が公立の約3〜5倍になる場合があります。高等学校(全日制)では約2倍です。
参考:文部科学省「【令和5年度子供の学習費調査結果のポイント】」
日本政策金融公庫「令和3年度 教育費負担の実態調査結果」によると、高校入学から大学卒業までに子ども1人あたりにかかる費用は、平均942.5万円と公表されています。以下は、大学について、学校種別ごとの入学費用と年間在学費用の目安です。
学校種別 | 入学費用 | 年間在学費用 |
国公立大学 | 67.2万円 | 103.5万円 |
私立大学(文系) | 81.8万円 | 152.0万円 |
私立大学(理系) | 88.8万円 | 183.2万円 |
※入学費用は受験費用・学校納付金・入学しなかった学校への納付金の合計
自宅外通学の場合は、さらに仕送り等の費用が加わります。同調査では、自宅外通学者への年間の仕送り額は平均95.8万円と公表されており、住居費や仕送りの負担が追加で生じます。子どもの高校・大学進学のタイミングは、家計負担が大きくなりやすい時期の一つです。なお、これらの金額は調査年度や家庭の状況、進学先によって変動するため、あくまで目安として確認することが重要です。
参考:日本政策金融公庫「令和3年度 教育費負担の実態調査結果」
学資保険で重視される指標の一つが「返戻率」です。返戻率の基本と、加入タイミングが保険料に与える影響を整理します。
返戻率は、払い込んだ保険料総額に対して受け取る祝い金・満期保険金の総額がどのくらいの割合になるかを示す指標です。計算式は次のとおりです。
返戻率が100%を超えると、払い込んだ保険料よりも多くの金額を受け取れることを示します。
一方で、商品設計や契約条件によっては、返戻率が100%を下回るケースもあります。返戻率は商品や契約条件(払い込み期間・加入時年齢・保障の有無など)によって大きく変わるため、契約前に確認したい指標です。

一般的に、払い込み期間を短くするほど、また契約者と被保険者(子ども)の加入時年齢が若いほど、返戻率は高くなる傾向があります。これは、保険会社が保険料を運用できる期間が長く確保できるためです。
また、保障型より貯蓄型のほうが返戻率は高くなる傾向があり、医療保障などの特約を外すかどうかも返戻率に影響します。
学資保険の加入タイミングは、商品や家庭の状況によって異なりますが、一般的には子どもが0歳から小学校入学前までに検討されるケースが多いとされています。この時期に加入すると、大学進学までの比較的長い払い込み期間を確保しやすく、月々の保険料負担を抑えながら将来の受取額を設計できます。

加入可能年齢の上限は商品によって異なり、子どもの年齢が上がるほど加入できる商品が限られ、同じ受取額を目指す場合は保険料負担が大きくなる場合があります。
一部の商品では、妊娠中に加入できる設計もあります。早めに加入するほど払い込み期間を長く取りやすく、同じ受取額を目安にする場合は月々の保険料負担を抑えやすくなります。
一方で、子どもが小学生や中学生の段階から加入する場合は、払い込み期間が短くなる分、月々の保険料が高くなる場合があります。加入を検討するタイミングでどのような商品設計が選べるかは、家計の状況や目標とする受取額によって変わるため、複数のシミュレーションを比較して検討することが重要です。
学資保険には、教育資金準備の手段として選ばれる理由と、事前に押さえておきたい注意点の両方があります。主な内容を整理します。
良い点 | 内容 |
計画的に積み立てられる | 保険料が毎月自動的に引き落とされる仕組みで、先取り貯蓄の効果が得やすい |
契約者の万一に備えられる | 契約者(親)が亡くなった場合、以降の保険料払い込みが免除される仕組みが一般的 |
税負担軽減の対象になる | 一般生命保険料控除の対象となり、所得税・住民税の負担軽減につながる場合がある |
計画的な積み立てという点では、毎月の保険料が口座から自動で引き落とされるため、預貯金のように途中で教育費以外の用途に使ってしまうリスクを抑えることができます。教育資金を計画的に準備したい家庭にとっては、仕組み自体が積立を後押しする設計といえます。
契約者に万一のことがあった場合の備えも、学資保険の特徴的な機能の一つです。多くの学資保険には保険料払い込みが免除される仕組みがあり、契約者が亡くなるなど所定の状態になった場合、以降の保険料の払い込みが免除されつつ、契約内容に応じて祝い金や満期保険金を受け取れます。

生命保険料控除については、国税庁および生命保険文化センターの公表情報によると、2012年(平成24年)1月1日以後に締結した新契約に適用される新制度では、一般生命保険料控除の上限は所得税で年間4万円、住民税で年間2.8万円です。学資保険は、契約内容に応じて一般生命保険料控除の対象となる場合があります。
参考:国税庁「No.1140 生命保険料控除」
参考:生命保険文化センター「税金に関するQ&A」
学資保険には以下のような注意点もあります。
注意点 | 内容 |
途中解約で元本割れの可能性 | 払い込み期間中の解約では、解約返戻金が払い込んだ保険料を下回る場合がある |
インフレに対応しづらい | 加入時に将来の受取額が固定されるタイプが中心で、物価上昇への備えには弱い |
流動性が低い | 途中で資金を引き出しにくく、教育費以外の急な出費には使いづらい |
途中解約のリスクは、学資保険を検討する際に特に注意したい点です。払い込み期間の途中で解約した場合、解約返戻金が払い込んだ保険料総額を下回ることがあります。家計に余裕がない時期に無理のある保険料を設定すると、払い続けられず解約して元本割れを起こす可能性があります。
インフレへの対応力の弱さも、長期の教育資金準備では押さえておきたいポイントです。学資保険の多くは契約時に将来の受取額が定められる設計のため、物価が大きく上昇する局面では、将来受け取る金額の実質的な価値が目減りする可能性があります。
また、流動性の低さも意識したい点で、病気・ケガや予期せぬ出費があった場合に、学資保険は預貯金のように必要なタイミングで自由に引き出しにくい設計になっています。
教育資金の準備方法には、学資保険のほかに預貯金や投資(NISA(つみたて投資枠など))があり、それぞれ特徴が異なります。公的な教育支援制度の活用も主な選択肢の一つです。
教育資金を準備する主な方法を、家庭で検討されやすい4つの観点で比較すると次のとおりです。
準備方法 | 元本の安全性 | 増やしやすさ | 万一の保障 | 流動性 |
預貯金 | 元本保証あり | 増えにくい | なし | 高い |
つみたて投資 | 元本保証なし(変動あり) | 長期的に増える可能性 | なし | 高い |
学資保険 | 契約条件による(途中解約時は元本割れの可能性あり) | 商品・条件による | あり(払込免除等) | 低い |
※一般的な特徴を踏まえ、本記事独自の観点で整理商品内容や市場環境によって異なります。
預貯金は元本割れのリスクがほぼない一方、現在の低金利環境下では大きく増やしにくいのが特徴の一つとされています。
つみたて投資は長期運用で資産を増やせる可能性がある一方、相場変動による元本割れのリスクがあり、必要な時期に想定額に届かない可能性もあります。学資保険は、契約者の万一への備えを持たせながら教育資金を計画的に準備できる一方、途中解約時の元本割れや流動性の低さが注意点です。
家庭によって優先する観点は異なるため、どれか1つに絞るのではなく、預貯金で流動性を確保しつつ、学資保険で計画的な積立と保障を確保し、NISA(つみたて投資枠など)で長期の資産形成を補うなど、組み合わせて準備する考え方もあります。
※返戻率・保障内容は商品ごとに異なり、将来の受取額や運用成果を保証するものではありません。
日本には、家庭の教育費負担を軽減する主な公的制度がいくつか用意されています。
児童手当(こども家庭庁)は、2024年10月の制度改正により、支給対象が高校生年代(18歳到達年度末)まで拡大され、所得制限も撤廃されました。支給額は0歳から3歳未満が月額15,000円、3歳から高校生年代が月額10,000円、第3子以降は一律月額30,000円です。
高等学校等就学支援金制度(文部科学省)は、国公私立の高等学校・高専等に在学する生徒の授業料負担を軽減する制度です。2026年4月からの新制度では、所得制限の撤廃など制度の見直しが行われ、対象範囲が拡大されています。
公立高校に相当する基準額として年間118,800円(月額9,900円相当)が支給され、私立高校に通う生徒には、一定の上限額まで授業料支援が行われる制度設計となっています。
日本学生支援機構(JASSO)の奨学金は、大学・短大・専門学校への進学時に利用できる主な公的支援で、返済不要の給付型と、返済が必要な貸与型(無利子の第一種・有利子の第二種)があります。給付型は家計基準・学力基準を満たす学生が対象です。
これらの公的支援制度を活用しても、家庭の教育費負担がゼロになるわけではありません。公的支援ではカバーしきれない部分を、家庭ごとに預貯金・投資・学資保険などで補っていく考え方が現実的です。学資保険は、その選択肢の一つとして位置づけられます。
参考:こども家庭庁「児童手当制度のご案内」
参考:文部科学省「高校生等への修学支援」
参考:日本学生支援機構「奨学金制度の種類と概要」
学資保険は、子どもの教育資金を計画的に準備するための選択肢の一つであり、保険料払い込みが免除される仕組みなどの保障機能を備えつつ、貯蓄機能もあるのが特徴とされています。
一方で、途中解約時の元本割れやインフレへの対応力の弱さ、流動性の低さといった注意点もあり、家計全体のなかでどの位置づけにするかを整理したうえで検討したい仕組みです。
教育費の準備方法は、預貯金・つみたて投資・学資保険などを家計全体で組み合わせるアプローチが検討されることが多く、公的な教育支援制度と合わせて考えると見通しが立てやすくなります。家庭ごとに組み合わせは異なるため、自分の家計にどう当てはめるか迷ったときは、専門家への相談も一つの方法です。