認知症保険

認知症でも入れる生命保険とは?介護保険や認知症保険についても解説

認知症でも入れる生命保険はありますが、保険料が高くなりやすい傾向や、保障内容が限定されるケースもあります。そのため、認知症になってからではなく、早い段階から備えについて検討することが大切です。

本記事では、認知症でも入れる生命保険と介護の現状、認知症に対する公的介護保険について詳しく解説します。さらに、認知症に備えられる保険や給付金などを円滑に受け取るための対策も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

認知症でも入れる可能性のある生命保険とは

高齢化が進む日本社会において、認知症はもはや一部の方の問題ではなく、誰にとっても現実的なリスクとなっています。その中で、多くの方が不安を感じることの一つが「認知症になると保険に入るのは難しいのでは」という点でしょう。

一般的な生命保険では健康状態の告知義務があり、認知症と診断されている場合、加入が難しいケースが多いといえます。しかし、健康状態に不安がある人でも、加入しやすく設計された保険商品もあります。

認知症の方でも、加入を検討できる可能性がある保険は次の2つです。

  • 引受基準緩和型の生命保険
  • 無告知型の生命保険

通常の生命保険とは、加入条件や保険料などが異なります。

それぞれの保険の内容と活用方法について解説します。

引受基準緩和型の生命保険

引受基準緩和型の生命保険とは、通常の生命保険よりも告知項目が大幅に簡略化された保険のことです。一般的な生命保険では、過去の病歴や入院歴、通院状況など多くの質問に回答しなければなりません。

一方、引受基準緩和型の生命保険では、告知項目が3〜5項目程度に限定されており、持病や既往歴があっても入りやすいのが特徴の一つとされています。

告知項目が限られているとはいえ、告知項目に認知症や軽度認知障害(MCI)が含まれている場合は加入が難しくなります。

事実と異なる内容を告知したり、告知すべき内容を申告しなかったりすると、告知義務違反とみなされ、保険金や給付金を受け取れなくなるため注意が必要です。

引受基準緩和型の生命保険は加入しやすいのが良い点ですが、保険料が通常の生命保険よりも高くなる傾向が多く、家計への負担が大きくなりがちです。

無告知型の生命保険

無告知型の生命保険は、健康状態の告知が不要で加入できる生命保険です。持病や既往歴、現在の通院状況や服薬状況、さらには認知症の診断歴の有無にかかわらず申し込みが可能な商品とされています。

ただし、引受基準緩和型の生命保険と比較しても、保険料はさらに高くなりやすい傾向があります。一方、保障額は少額に設定されるケースが多いとされています。

また、加入後一定期間は死亡保障が制限され、病気による死亡の場合には既払込保険料相当額が支払われるなど、保障内容には複数の制約が設けられています。

そのため、無告知型の生命保険は、持病や既往歴によりほかの生命保険への加入が難しい方が、最低限の葬儀費用や整理資金だけは確保したいといった限定的な目的で利用されることが多い傾向にあります。

保障額に対して保険料の負担が大きく、制度上の制約も多いため、加入を検討する際には、複数の商品を比較し、判断することが重要です。

中立的な相談機関で確認する方法もあります。

認知症だと保険契約が難しくなる理由

認知症の方が生命保険に加入するのが難しい理由の一つが、保険制度の仕組みにあります。

生命保険制度は、相互扶助の考え方を基本としており、多数の加入者が保険料を拠出し合い、万が一の死亡・疾病・介護のリスクに対して、加入者全員で備える仕組みです。

そのため、発症リスクや死亡リスクが高いケースに対して、保険会社は加入を慎重に判断します。認知症は進行性の疾患であり、給付期間が長期化しやすいことに加え、介護・医療・生活支援など、複数の分野で給付が発生するリスクがあります。

このような理由を背景に、保険会社では認知症の方の加入を慎重に判断せざるを得ないのです。

もう一つの重要な理由は、認知症の方における契約能力の問題という法的な側面です。保険契約は金融商品契約であり、民法上の法律行為に該当します。そのため、契約には「意思能力」と「判断能力」が前提条件として求められます。

認知症は、判断能力や記憶力の低下をともなう疾患であり、将来「本人の意思に基づく有効な契約」と認定されないケースもあるため、注意が必要です。保険会社では、このようなリスクを回避する目的から、引受制限を行っています。

ただし、軽度認知障害(MCI)の場合は、生命保険に加入できる可能性もゼロではありません。軽度認知障害(MCI)とは、記憶力の低下などの症状が見られるものの、日常生活は支障なく送れる状態を指します。

このようなグレーゾーンの場合は、意思能力があるとみなされれば、保険の加入も可能です。

認知症のリスクに備えて保険契約を検討している場合は、相談窓口を利用しながら検討することもできます。

認知症や介護の現状

認知症になると、介護の負担や経済的負担、家族関係への影響など、さまざまな問題に長期的に対応しなければなりません。ここでは、公的データや調査結果をもとに、認知症と介護を取り巻く現状をお伝えします。

介護が必要になった原因の1位は認知症

厚生労働省が2022年にまとめた「国民生活基礎調査」のデータによると、介護が必要となった原因として最も多いのが認知症です。要介護状態に限定すると、約23.6%が認知症を原因として介護が必要になっていると報告されています。

厚生労働省の資料によると、2022年(令和4年)の認知症の高齢者数は約443万人、軽度認知障害の高齢者数は約559万人と推計されており、合計では1,000万人を超えます。

さらに、有病率が今後も一定と仮定すると、2040年(令和22年)には合計約1,200万人が認知症または軽度認知障害になると推計されており、これは高齢者の約3.3人に1人という割合です。

認知症による介護は一部の人だけの問題ではなく、誰にとっても起こり得る問題として、早い段階から備えについて検討することが大切です。

参考:厚生労働省「2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況 Ⅳ 介護の状況」
参考:厚生労働省「認知症および軽度認知障害(MCI)の高齢者数と有病率の将来推計」

介護にかかる費用と期間

介護状態になると、本人だけでなく家族にもさまざまな費用がかかります。生命保険文化センターの調査によれば、住宅改修や介護用ベッド購入など、介護にかかる一時的な費用は、平均で約47.2万円です。

さらに、介護サービス利用にともなう月々の平均費用は約9万円に上ります。この金額には公的介護保険サービスを利用した際の自己負担分も含まれていますが、介護の期間が長引くほど家計への負担は大きくなりがちです。

また、介護を行った期間は平均約4年7ヶ月と報告されており、介護が数年にわたって続くことがわかります。中には10年以上にわたって介護が必要なケースもあり、介護期間の長期化を考慮した備えが必要です。

介護は一時的な支出だけでなく、継続的な費用負担と長期の生活支援を必要とします。公的介護保険制度によって一定のサービスを受けられますが、自己負担分や保険外サービスの費用負担は残るため、介護状態になる前から経済的な備えが大切です。

認知症のリスクに早めに備えたいけど、自分に合った保険がわからないという方は、中立的な相談機関で確認する方法もあります。

参考:公益財団法人 生命保険文化センター「リスクに備えるための生活設計」

認知症に対する公的介護保険とは

日本には、介護が必要になった場合の負担を軽減するための公的介護保険制度が整備されています。

公的介護保険は、40歳以上の全国民が被保険者として加入することが義務付けられており、介護保険料を納付することにより、要介護や要支援と認定された際に公的サービスを利用できる仕組みです。

認定を受けると、訪問介護やデイサービス、施設入所などの介護サービスを利用することが可能です。ただし、介護サービスを受ける際は原則として1割の自己負担が必要であり、本人や世帯の所得に応じて2割・3割負担となる場合もあります。

また、介護サービスごとに利用限度額が決まっており、この限度額を超えるサービス分は、保険給付の対象外です。見守りサービスなどは保険適用外のため、これらは自己負担となります。

そのため、公的介護保険に加えて、民間の生命保険や介護保険で不足する部分に備えることも選択肢の一つとなるでしょう。

認知症に備えられる保険とは

認知症に備える手段として活用できる主な保険は、次の3つです。

  • 介護保険
  • 認知症保険
  • 医療保険の特約の活用

それぞれの保障対象や給付条件、目的は異なっており、どのようなリスクにどの程度備えたいかで選択肢が変わります。

主な違いは以下のとおりです。

種類

主な目的

特徴

介護保険

介護全般への備え

包括的な保障で認知症も対象

認知症保険

認知症に特化

給付が早く、生活リスクもカバー

医療保険特約

補助的な備え

保障範囲や金額は限定的

それぞれの保険について詳しく解説します。

介護保険

民間の介護保険は、病気や事故、加齢などによって要介護状態になった場合に給付金を受け取れる保険です。保障の対象には、認知症による要介護状態も含まれます。一般的な給付条件は、次の2つです。

  • 公的介護保険制度における「要介護認定(要介護1以上など)」
  • 保険会社独自の要介護状態基準(寝たきり・認知症進行状態など)

給付形態についても複数の種類があり、認定時にまとまった資金を一括で受け取る一時金型、定期的に一定額が支給される年金型、一時金と年金を組み合わせた併用型などさまざまなタイプがあります。

ただし、多くの民間の介護保険には、免責期間が設定されている点には注意が必要です。要介護状態と認定されても、一定期間、その状態が継続しなければ給付対象とはなりません。

また、軽度認知障害(MCI)の段階では、保険の給付条件を満たすことが難しく、保障の対象外となるケースが多いでしょう。

民間の介護保険は認知症に対する備えとして機能しますが、認知症専用の保険ではなく、要介護状態全般に対する備えを目的とした保険です。認知症は、その対象疾患の一部と位置づけられています。

認知症保険

認知症保険は、認知症と診断された場合に給付金を受け取れる、認知症に特化した保険です。一般的な生命保険や介護保険とは異なり、保障対象を認知症に絞って設計されている点が特徴の一つとされています。

商品によって異なりますが、一般的には医師による認知症の確定診断が求められ、さらに要介護認定や所定の認知症状態が一定期間継続することが条件となる場合もあります。

また、多くの商品では軽度認知障害(MCI)は保障対象外とされていますが、軽度認知障害(MCI)の段階から保障対象とする商品もあります。

認知症保険の給付タイプは、介護保険と同様に一時金型と年金型、併用型の3つです。認知症となった際に住まいを改修したい方や、生活費を事前に確保しておきたい方のニーズを満たせるよう設計されています。

要介護認定を必要としないことも認知症保険の特徴の一つとされています。介護保険では、公的介護保険制度の要介護認定や所定の要介護状態が一定期間継続することが必要となるのに対し、認知症保険では条件を満たせば給付金が支払われます。

そのため、介護保険と比較すると、給付開始までが早い場合があります。

医療保険の特約の活用

既存の医療保険に介護に関する特約を付けることで、認知症リスクに備えることができます。新たに保険契約を増やすのではなく、すでに加入している主契約に認知症に関する保障を追加する形です。

主な特約として、次のようなものが挙げられます。

  • 介護一時金特約
  • 介護年金特約

特約を活用すれば、新たな保険商品を契約する手間を減らせる場合があるほか、独立した保険に加入するよりも保険料負担を抑えやすくなります。一方で、特約による保障は、簡易的な内容に留まることが多く、認知症に特化した内容になっていない点には注意が必要です。

給付条件は商品ごとに異なり、重度の要介護状態を条件とするものもあります。さらに、保障額自体も限定的で、長期の介護費用を十分にカバーできないケースもあるでしょう。

介護保険や認知症保険は一定の備えとして機能しますが、医療保険の特約はあくまでも補助的な役割といえます。その点を理解したうえで、どのようなリスクに、どの程度の保障を確保したいのかを事前に確認することが重要です。

認知症のリスクに備えて、どのような保障を選ぶべきか迷う場合は、相談窓口を利用しながら検討することもできます。

保険金や給付金を円滑に受け取るための対策

保険金や給付金を円滑に受け取るためには、「指定代理請求人制度」と「任意後見制度」の2つの制度を活用する方法があります。これらはいずれも、本人の判断能力や意思表示能力が低下した場合に備えられる制度です。

指定代理請求人制度とは、被保険者本人が保険金を請求できなくなった場合に、あらかじめ指定した家族などが本人に代わって給付金や保険金を請求できる制度のことです。

せっかく認知症に備えて保険をかけていても、請求自体を行えなければ、給付金を手にすることはできません。指定代理請求人を設定しておけば、本人が認知症となり意思表示できない状態になっても、円滑に保険請求の手続きを行えます。

任意後見制度とは、本人が判断能力を十分に有している段階で、将来に備えて財産管理や契約行為を任せる後見人を公正証書による契約で定めておく制度です。

本人の判断能力が低下した後、家庭裁判所が任意後見監督人を選任することで契約の効力が生じ、後見人は預貯金管理や不動産管理、契約手続きなどの法律行為を本人に代わって行えます。

この2つの制度を活用することで、円滑に給付金や保険金を受け取れるだけでなく、生活や財産管理といった法的な問題にも備えられます。

認知症に備えるには、どの保険に入るかという商品選びだけでなく、いざという時に誰が本人に代わって請求手続きを行うのかという点も重要です。

指定代理請求人制度と任意後見制度は、認知症リスクに備えるための現実的な対策の一つといえるでしょう。 

認知症に備えて生命保険の加入を検討しよう

認知症や介護は、もはや一部の高齢者や特定の家庭だけの問題ではなく、誰にとっても現実的に起こり得る身近な問題です。

厚生労働省の推計や各種データが示すとおり、高齢化の進行とともに認知症の有病者数は今後も増加が見込まれており、「将来、介護が必要になる可能性がある」という前提で、人生設計を考える必要があるでしょう。

介護には、介護用ベッドや福祉用具の購入費だけでなく、施設利用料などの継続的な経済負担がかかります。さらに、介護は長期化するケースも少なくありません。こうした背景から、民間の介護保険や認知症保険を備えとして検討する方法もあります。

また、保険に加入するだけでなく、指定代理請求人制度や任意後見制度も活用し、円滑に給付金や保険金を受け取れるようにしておくことも重要です。

介護への備えを含めた保険選びについて相談したい方は、相談サービスの利用も選択肢の一つです。