終身保険

終身保険による相続対策とは?一時払いを活用した相続税対策を紹介

終身保険などの生命保険は、相続対策に活用されることがあります。例えば、相続財産が不動産の場合は、相続人の間で公平に分けることが難しいケースもあるでしょう。

その際、死亡保険金を活用することで、不動産を相続しない相続人に現金として遺す方法が検討できます。

本記事では、生命保険を用いた相続対策について解説します。具体的な手法や注意点、相続対策向けの保険を選ぶポイントなども紹介します。

相続対策に生命保険を活用できる理由

契約者(保険料負担者)と被保険者を同一にし、保険金受取人を第三者として死亡保障のある生命保険に加入すると、死亡保険金は原則として保険金受取人固有の財産として扱われます。

また、相続時には相続税や不動産の売却費用などのさまざまな費用が発生することもあるため、死亡保険金をそれらの費用の支払いに充てるケースもあります。

生命保険を利用した相続対策の仕組みや、相続対策に利用されることがある生命保険の種類について見ていきましょう。

生命保険を利用した相続対策の仕組み

生命保険を相続対策に活用する場面はいくつかあります。主な活用目的は次の3つです。

  • 代償分割
  • 二次相続
  • 相続税対策

いずれも、死亡保険金を相続対策の手段として活用するものです。どの目的で生命保険を活用するかをあらかじめ決めておくことで、適切な死亡保険金の額や受取人を設定できます。

各方法の仕組みについて解説します。

代償分割

代償分割とは、財産を受け取った相続人が、他の相続人に代償金を支払うことで遺産の取得額を調整する遺産分割の手法です。不動産などの分割しにくい財産が多い場合に活用できます。

例えば、父(母はすでに他界)が亡くなり、相続人は子ども2人(父と同居している長女、他の場所で暮らす長男)のみの場合について考えてみましょう。相続財産は5,000万円相当の価値のある自宅と、現金3,000万円です。

法定相続分に従って遺産分割をするなら、長女・長男それぞれ4,000万円相当を相続することになるでしょう。自宅を売却し、現金として4,000万円ずつ分ける方法もあります。

しかし、今回のように現在住んでいる家が相続対象となる場合、売却せずに住み続けたいと考える場合もあるでしょう。

そのようなときに活用できるのが代償分割です。長女が長男に1,000万円の代償金を支払えば、長女・長男ともに4,000万円の財産を取得したことになり、公平な遺産分割を実現できます。

父が自分自身を被保険者、保険金受取人を長女、死亡保険金額を1,000万円に設定した生命保険に加入していたなら、長女は死亡保険金を活用して代償金を支払うことができ、遺産分割を円滑に進められる可能性があります。

なお、長女を受取人とした死亡保険金は、民事上は原則として長女固有の財産として扱われ、遺産分割協議の対象にはなりません。

二次相続

二次相続とは、一次相続の後に発生する相続のことです。一般に、一次相続で配偶者が財産を取得した後、その配偶者が亡くなったときに発生する相続を指します。

配偶者と子がいる人が亡くなった場合(一次相続)、配偶者が多くの財産を取得すると、一次相続の時点では配偶者の税負担が軽くなることがあります。

しかし、その後配偶者が亡くなると(二次相続)、配偶者に移った財産が子に引き継がれる際に相続税の課税対象となり、結果として家族全体の税負担が増える可能性があります。

1億6,000万円と法定相続分のどちらか多い額までは相続税が軽減される「配偶者の税額の軽減(配偶者控除)」なども活用し、一次相続と二次相続を通じた家族全体の税負担が過度に大きくならないよう、一次相続の段階から分割内容を検討することが重要です。

二次相続で発生する相続税の負担額が大きくなりそうな場合は、二次相続への備えとして、一次相続の被相続人の配偶者が自分自身を被保険者、子を保険金受取人とした生命保険に加入し、二次相続時の納税資金として遺す方法もあります。

例えば、二次相続する子が2人であれば、子それぞれを保険金受取人とし、死亡保険金を50%ずつ受け取れるようにしておくのも一つの方法です。

参考:国税庁「No.4158 配偶者の税額の軽減」

相続税対策

生命保険の活用目的の一つとして、相続税対策があります。

生命保険は、死亡時に現金で保険金を受け取れるため、相続税の納税資金を確保しやすいのが良い点です。また、相続人ごとに受取人や金額を指定できる点でも、相続税対策として活用されることのある手段の一つとされています。

相続税対策として生命保険を利用する場合、一般的に「被保険者=被相続人」「保険金受取人=相続人」とする形が検討されます。この場合、死亡保険金は民事上は受取人固有の財産として扱われますが、税務上は相続等により取得したものとみなされ、相続税の課税対象です。

ただし、受取人が相続人である死亡保険金については、「500万円 × 法定相続人の数」までの非課税限度額が設けられており、この非課税枠を活用することで、相続税の負担を軽減できます。

参考:国税庁「No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金」

相続対策に活用される生命保険の種類

相続対策に活用される生命保険は、被相続人の死亡に備えて、相続人に保険金を遺すことができる死亡保障のある保険です。死亡保障がメインの保障となる「定期保険」「終身保険」「養老保険」などの保険は、相続対策に活用されることがあります。

その中でも終身保険は、保険期間が終身(被保険者が死亡するまで)のため、契約が有効に継続しており、免責事由等に該当しない限り死亡保険金が受け取れる保険です。相続対策の選択肢の一つとして、利用されることが少なくありません。

どのような相続対策が必要かは、財産の種類や価値(金額)、相続人の人数や被相続人との間柄など、さまざまな要素によって変わります。また、相続対策が変わると、保険の「保険金受取人」や「死亡保険金額」などの設計も変わります。

相続対策に向けた保険加入でお悩みの場合は、相談窓口を利用しながら検討することもできます。

生命保険契約で発生する可能性がある税金の種類

生命保険契約を締結し、保険金支払事由が生じて保険金を受け取った場合に、次の税金が課せられることがあります。

  • 相続税
  • 贈与税
  • 所得税

それぞれの税金が発生するケースについて解説します。

相続税

生命保険契約を締結するときは、次の3者を決める必要があります。

【生命保険契約に関わる3者】

契約者

保険契約を締結する人物。保険料を支払うことが一般的

被保険者

保険金の支払事由となる人物。契約者と異なる人物が被保険者になる場合、契約時に本人の同意が必要となります。

保険金受取人

保険金を受け取る人物。保険会社によって受取人として指定できる範囲(例:配偶者か1親等・2親等の血族のみなど)に制限が設けられている場合があります。

被相続人の死亡によって取得した死亡保険金のうち、保険料の全部または一部を被相続人が負担していたものは、保険金受取人が相続により取得したものとみなされ、相続税の課税対象となります。

例えば、ある父親が自分自身の死亡時に備え、終身保険に加入したとしましょう。この終身保険の契約者と被保険者はともに「父親」です。

父親が保険料を負担し、長男が受取人として死亡保険金を受け取った場合、その死亡保険金は税務上、長男の相続税の課税対象となる可能性があります。

贈与税

契約者(保険料負担者)、被保険者、保険金受取人がすべて異なる場合は、贈与税が課税される可能性があります。例えば、ある父親が配偶者(母親)を被保険者として終身保険に加入したケースについて考えてみましょう。

長男を保険金受取人として指定すると、母親の死亡時に長男は死亡保険金を受け取れます。この場合、保険金は父親から長男への贈与とみなされるため、長男は受け取った保険金額に応じて贈与税が課税される可能性があります。

所得税

契約者(保険料負担者)と保険金受取人が同一で、被保険者のみ異なる場合は、所得税が課税される可能性があります。例えば、父親が配偶者(母親)を被保険者として終身保険に加入するケースについて考えてみましょう。

父親自身を保険金受取人として指定すると、母親の死亡時に父親が死亡保険金を受け取れます。この場合、父親が受け取った死亡保険金は所得税(一時所得)の課税対象となるため、父親には、保険金額や払込保険料などをもとに計算された所得税が課税される場合があります。

税金の種類が異なると、税率や課税対象額の計算方法なども異なります。保険金額が同じでも、税金の種類によって税額が異なるため、実際に手元に残る金額が変わる可能性があります。

終身保険などの死亡保障のある保険に加入するときは、被保険者と保険金受取人を適切に設定することが重要です。どのように設定するか悩んだときは、一般的な相談サービスも存在します。 

終身保険を利用した相続税対策の良い点   

相続税対策に生命保険を活用するケースは多くありますが、その中でも終身保険を利用するケースは少なくありません。相続税対策に終身保険を利用する主な良い点は、次のとおりです。

  • 死亡保険金を確保しやすい
  • 相続税の非課税枠を利用できる
  • 受取人を指定できる
  • 現金としてすぐに利用できる
  • 一時払い(一括払い)なら高齢でも加入しやすい

それぞれの良い点について見ていきましょう。

死亡保険金を確保しやすい

死亡保障のある保険では、保険期間中に被保険者が死亡すると保険金受取人に死亡保険金が支払われます。保険期間を決めて加入する「定期保険」では、保険期間中に被保険者が死亡しない可能性があり、必ずしも死亡保険金を受け取れるとは限りません。

一方、終身保険は一生涯保障が適用されるため、契約が有効に継続しており、免責事由等に該当しない限り、死亡保険金が支払われます。相続税対策に死亡保険金を活用したい場合、死亡保険金を確保しやすい終身保険は選択肢の一つとなるでしょう。

相続税の非課税枠を利用できる

被相続人が保険料を負担し、被保険者となっている生命保険で、保険金受取人を相続人とした場合、死亡保険金は受取人が相続により取得したものとみなされ、相続税の課税対象となります。

ただし、保険金額の全額が課税対象となるわけではありません。死亡保険金については以下の非課税枠があり、課税対象額を減らせる可能性があります。

死亡保険金の相続税非課税額

  • 500万円 × 法定相続人の数

例えば、配偶者と子2人が法定相続人の場合、法定相続人の数は3人となるため、死亡保険金の相続税非課税額は、1,500万円(500万円×3人)です。死亡保険金の額がこの範囲内であれば、死亡保険金に対して相続税は課されません。

参考:国税庁「No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金」

受取人を指定できる

財産を特定の方に相続させることは簡単ではありません。特に相続人が複数人存在する場合は、遺言書を作成したとしても、遺留分への配慮が必要となるため、被相続人(財産を遺す方)の意図どおりの相続ができないケースもあります。

しかし、終身保険などの生命保険なら、保険金受取人を指定することが可能です。特定の人物にあらかじめ定めた金額を遺せるため、トラブルの回避につながることがあります。

現金としてすぐに利用できる

通常、被相続人が死亡すると金融機関は預貯金口座を一時的に凍結するため、すぐに引き出すことはできません。また、不動産も遺産分割が完了するまでは売却が難しいため、速やかに現金化することは難しいでしょう。

しかし、死亡保険金は保険金受取人固有の財産として扱われ、受取人が単独で請求できるため、比較的速やかに現金として受け取れる可能性があります。相続税の申告と納付は「被相続人の死亡を知った日の翌日から10ヶ月以内」に行うことが原則です。

スムーズに相続税の手続きをするためにも、すぐに現金として利用できる死亡保険金は選択肢の一つといえるでしょう。

参考:国税庁「No.4205 相続税の申告と納税」

一時払い(一括払い)なら高齢でも加入しやすい

生命保険は加入可能な年齢があらかじめ定められているため、高齢になると新たに加入することが難しくなる場合があります。

しかし、保険料を一時払い(一括払い)にすることで、高齢でも加入できるケースがあります。ある程度の年齢になってから相続対策を始める場合でも、終身保険を検討できる可能性があります。

また、保険料を一時払いにすると、一時的に手元の現預金が減少するため、相続財産の構成が変わる可能性があります。

ただし、個々の状況によって取り扱いは異なるため、税理士などの専門家に相談することが重要です。相続人が受け取る財産を増やす手段としても、預貯金ではなく死亡保険金として遺す方法も検討できます。

終身保険を相続税対策に利用する際の注意点

終身保険を相続税対策に利用する場合は、以下の点に注意が必要です。

  • 適切な保険金受取人を指定する
  • 保険金額が非課税枠を超えると相続税の対象になる

それぞれの注意点について解説します。

適切な保険金受取人を指定する

保険金受取人を誰に指定するかによって、税金の種類が変わるだけでなく、税額や相続税対策としての効果も変わる可能性があります。相続税対策として、どのような効果を期待するのかを明確にしたうえで、適切な保険金受取人を設定することが重要です。

また、保険金受取人となる方が、死亡保険金を遺す意図を正確に理解していることも大切です。保険契約を締結する前に十分に話し合い、死亡保険金が適切に活用されるようにしておきましょう。

保険金額が非課税枠を超えると相続税の対象となる

保険契約者(保険料負担者)と被保険者を同一にし、保険金受取人を相続人にした場合、死亡保険金は相続により取得したものとみなされ「500万円 × 法定相続人の数」の相続税非課税枠が適用されます。

死亡保険金が相続税非課税限度額の範囲内であれば、死亡保険金のその部分については相続税が課税されません。

ただし、非課税限度額を超過した部分については、相続税の課税対象となる可能性がある点に注意が必要です。相続税の負担軽減を目的として生命保険を利用する場合は、適切な保険金額に設定するようにしましょう。

また、死亡保険金に対して非課税枠が適用されるのは、原則として保険金受取人が相続人(配偶者・子・直系尊属・兄弟姉妹)の場合のみです。相続人以外が死亡保険金の受取人になる場合は、非課税枠が適用されない点に注意しましょう。

適切な相続対策は、相続財産の種類や額、相続人によっても異なります。ご自身に合った相続対策についてお悩みの方は、中立的な相談機関で確認する方法もあります。

相続税対策向けの終身保険を選ぶポイント

終身保険であっても、すべての商品が相続税対策に適しているとは限りません。より効果的な相続税対策を行うためにも、次のポイントに注目して終身保険を検討しましょう。

  • 加入目的を明確にする
  • 保障内容を確認する
  • 保険料払込期間を確認する

それぞれのポイントについて解説します。

加入目的を明確にする

終身保険を活用した相続税対策には、複数の考え方があります。まずは、相続税の負担軽減(非課税枠の活用など)を目的とするのか、相続税の納税資金を確保するのかなど、加入目的を明確にしておきましょう。

また、相続税対策として利用する場合は、死亡保険金の非課税枠を踏まえ、受取人や保険金額をどのように設定するのかを含めて、設計方針を明確に決めておくことが必要です。

加入目的を明確にした後は、関連するすべての相続人に意図を伝えておきましょう。意図が正確に伝わっていないと、死亡保険金によって期待するような効果を得られないばかりか、相続人間のトラブルに発展する可能性があります。

保障内容を確認する

終身保険によって得られる保障は死亡保障が基本ですが、商品や特約の組み合わせによっては、死亡保障以外の保障が付加できる場合もあります。例えば、次のような特約があります。

  • 高度障害保障
  • 医療保障
  • 先進医療保障
  • 災害保障

保障が手厚くなるほど、さまざまなリスクに備えられますが、その分、保険料が高くなる傾向にあります。保障内容と保険料のバランスを踏まえて検討することが大切です。

また、終身保険の中には配当金のあるタイプの商品もあります。配当金があると定期的に受け取れる可能性がありますが、保険料が高額になることもあります。死亡保険金以外の保障内容も比較したうえで、ご自身に合った終身保険を選びましょう。

保険料払込期間を確認する

保険料の払込期間も確認しておきましょう。一時払いなら、保険料を月々支払う手間を省けるだけでなく、総額の保険料を抑えられるケースもあります。

しかし、保険契約後すぐに被保険者が死亡した場合は、他の支払方法と比べて払込総額が高くなる可能性があります。払込期間ごとの良い点と注意点を比較し、ご自身に合った支払方法を選びましょう。

保険料払込期間を短縮する

保険料払込期間を長くする

良い点

  • 払込保険料を抑えられるケースがある
  • 保険料支払の手間を軽減できる
  • 加入時にまとまった資金がなくとも、手厚い死亡保険に加入できる

注意点

  • 加入時にまとまった資金が必要
  • 保険料の支払いの手間が増える場合がある
  • 1ヶ月あたりの保険料が高くなる傾向がある

自身に合った保険に悩んだら、相談サービスの利用も一つの選択肢です。

相続対策は専門家に相談して慎重に進めよう

すべての人に適した相続対策・相続税対策は存在しません。被相続人の思い、相続人との関係、相続財産などによって適切な相続対策・相続税対策は異なります。

終身保険は相続対策や相続税対策に活用可能な保険です。しかし、適切な活用方法はケースバイケースのため、専門家に相談して慎重に検討することが重要になるでしょう。

相続対策についてのお悩みは、中立的な相談機関で確認する方法もあります。

関連コラム

終身保険コラム一覧へ戻る