介護保険

医療保険と介護保険は併用できる?違いや優先順位についてわかりやすく解説

公的医療保険・公的介護保険とは

公的医療保険とは、医療費の一部を保険で負担することで、医療費の自己負担を軽減する制度です。

日本は「国民皆保険制度」を導入しているため、原則として誰もが公的医療保険制度に加入しています。代表的な制度としては、国民健康保険や健康保険組合、後期高齢者医療制度などがあります。

公的介護保険は、40歳以上の国民全員に加入が義務付けられている制度です。介護が必要な状態となり、自治体の要介護認定を受けた場合、公的介護保険を利用して介護サービスを受けることができます。

以下で、それぞれの制度の概要を解説します。

公的医療保険とは

公的医療保険は、人によって加入する制度が異なる点が特徴の一つとされています。

自営業や無職の人であれば国民健康保険、会社員は組合管掌健康保険(健康保険)または全国健康保険協会管掌健康保険(協会けんぽ)、公務員や教職員では共済組合に加入します。また、75歳以上になると、全員が後期高齢者医療制度の加入者となります。

公的医療保険の主な良い点には、以下のようなものがあります。

  • 医療費の自己負担が1~3割で済む(年齢や所得に応じる)
  • 患者側で医療機関を自由に選べる
  • 1ヶ月の医療費が一定額を超えた場合、超過分の払い戻しを受けられる場合がある

医療機関を受診した際の自己負担割合は、6歳以上70歳未満の場合は原則3割です。70歳以上75歳未満では自己負担は原則2割で、現役並み所得者は3割です。75歳以上になると自己負担は原則1割となり、所得によって2割または3割となるケースもあります。自己負担以外の部分は、公的医療保険で賄われています。

患者が自由に医療機関を選べることは、当たり前だと思われるかもしれません。諸外国には「かかりつけ医」を登録し、最初はそのかかりつけ医を受診するよう定められている場合もあります。

公的医療保険には、高額療養費制度があります。月あたりの医療費が、所得に応じて設定された限度を超える場合は、超過分を払い戻す制度です。

年収500万円、自己負担3割の人の事例で考えると、1ヶ月に100万円の医療費がかかったとしても、高額療養費制度が適用されることで、自己負担額は約9万円程度となるケースがあります。

公的医療保険は、美容整形や歯列矯正などは原則として対象外です。これらの診療は「自由診療」となり、全額自己負担となります。その他にも、先進医療の技術料や入院時の差額ベッド代など公的医療保険の対象とならないものがあるため、注意が必要です。

参考:厚生労働省「我が国の医療保険について」

公的介護保険とは

公的介護保険は、高齢者の介護を社会全体で支え合う仕組みとして2000年に創設されました。40歳以上65歳未満の公的医療保険加入者は、公的介護保険の第2号被保険者となり、保険料を負担します。加入は任意ではなく、義務付けられています。

第1号被保険者である65歳以上の人は、介護が必要な状態と自治体に認定されると、介護サービスの利用に公的介護保険を利用できるようになります。40歳以上64歳未満の人でも、特定の疾病によって介護が必要となった場合には、公的介護保険が利用可能です。

公的介護保険を利用した場合の自己負担は原則1割ですが、一定以上の所得がある場合は2割または3割となります。

自治体による介護の必要度の認定を「要介護認定」と呼びます。要介護認定は、2段階の「要支援」と5段階の「要介護」からなり、要介護1~5段階のうち「要介護5」が最重度の介護を必要とする状態です。

要支援、要介護の区分により、公的介護保険が使える介護サービスの利用限度額が定められています。例えば、「要介護5」の場合、1ヶ月の居宅サービス費の利用限度額は36万2,170円です。利用限度額を超えた分や、公的介護保険が使えないサービスの利用費用は、全額自己負担となります。

参考:厚生労働省「介護保険制度の概要」

原則公的医療保険と公的介護保険は併用できない

公的医療保険と公的介護保険は、同じ原因による状態に対して両方の対象となる場合でも、原則として併用できません。それぞれの制度の目的が異なるためです。

公的医療保険は、病気やケガをした際の医療費を補助するのが目的であり、公的介護保険は、介護が必要な人の日常生活に必要なサービスを提供するためのものです。両制度の対象となる場合は、原則として公的介護保険が優先されます。

基本的には両制度は併用できませんが、例外的に併用できるケースもあります。対象となる傷病やサービスの目的が異なる場合などです。

以下で、例外となる事例や、公的介護保険が優先されるケースなどについて解説します。

公的医療保険と公的介護保険の両方が利用できるケース

例外的に公的医療保険と公的介護保険の両方が利用できるケースとしては、以下の3つが挙げられます。

  • 新たな病気となり異なる診断名を受けた場合
  • 医療と介護で保険の適用時期が異なる場合
  • 末期がんや難病を治療している場合

公的介護保険を使ったリハビリ中に別の病気を発症し、異なる診断名の病気に対して公的医療保険で治療や訪問看護を受ける場合には、併用が可能となるケースがあります。

一般的に、公的医療保険と公的介護保険が同時期に適用されることはありませんが、利用する時期をずらすことで併用できる場合があります。公的医療保険による外来リハビリテーションを受けていた患者が、別の施設で公的介護保険によるリハビリに移行する場合が一例です。

このような場合、医療から介護への円滑な移行を促すため、別の施設でのリハビリの利用開始日を含む月の翌々月まで、両制度の併用が認められています。

さらに、末期がんや難病の患者の場合には、公的介護保険を使ってデイサービスなどを利用しながら、公的医療保険で訪問看護を受けられるといったケースがあります。難病の患者に対しては、医療と介護の両方のケアが必要となる場合があるためです。

両方利用できる場合は公的介護保険が優先対象

公的医療保険と公的介護保険の両方が利用できるサービスでは、公的介護保険が優先されます。公的介護保険でサービスが受けられる場合は、公的医療保険からの給付は原則として行われません。

医療行為ではなく、日常生活の支援など介護サービスを必要とする場合は、公的介護保険を利用することが一般的です。

具体例としては、訪問介護やデイサービスの利用、福祉用具の貸与などです。訪問介護は、ホームヘルパーが利用者の自宅を訪れ、食事や入浴、排泄などの介助を行ったり、掃除や洗濯などの生活援助を行います。

両方が利用できるケースでは、対象者の年齢や状態によって優先される保険が変わることもあります。訪問看護がその一例です。訪問看護はホームヘルパーなどが利用者の自宅を訪れ、医師の指示書のもとに必要な看護ケアを行います。どちらの保険を使う場合でも医師の指示書が必要です。

65歳以上で要介護認定を受けている人が訪問看護を利用する場合には、一般的には公的介護保険が適用されます。ただし、40歳以上65歳未満で特定疾病により訪問看護が必要な患者には、公的医療保険が適用されます。特定疾病は16種類あり、末期がんや関節リウマチなどが含まれています。

65歳以上の人で、医師が「公的医療保険による訪問看護が必要」と判断した場合も、公的医療保険が適用されます。

公的医療保険が適用されるケース

公的医療保険は、疾病や傷害の治療を主たる目的とする制度です。要介護認定を受けている場合でも、病気やケガの治療は、公的医療保険が優先して適用されます。主な例は、以下のとおりです。

  • 風邪やインフルエンザなど急性期の治療が必要な場合
  • 手術や点滴といった医療行為が必要な場合
  • 糖尿病や高血圧など慢性疾患で継続的な治療や投薬管理が必要な場合
  • 血液検査やCTなど、入院や通院に伴う検査が必要な場合

これらはいずれも「治療」を目的とした医療行為に該当するため、公的医療保険が適用されるケースです。

医療費や介護費の負担を抑えるには?

医療費は手術や入院などによって高額になることがあり、介護はいつまで続くかわからないため費用が膨らむ可能性があります。医療費や介護費の負担を抑えるには、民間保険への加入も一つの方法です。

民間の医療保険に加入することの良い点として、以下のようなものがあります。

  • 公的医療保険ではカバーできない費用が補完できる
  • 公的医療保険が適用されない治療も選択しやすくなる
  • 入院や療養が長期にわたった場合の経済的負担を軽減できる

入院時の差額ベッド代や見舞いに来る家族の交通費などは、公的医療保険の対象外です。こうした費用が積み重なると、負担が大きくなることがあります。

先進医療の技術料や自由診療となる治療についても、公的医療保険は原則として対象外です。民間の医療保険には、こうした費用負担をカバーするための特約があるため、加入しておくことで治療の選択肢が増える可能性があります。

入院や療養によって働けない期間が長期にわたった場合、収入が減少することも考えられます。こうした事態に備えて、民間の医療保険に加入しておくのも一つの選択肢です。

民間の介護保険は、介護にかかる経済的な負担に備えるための保険商品です。保険商品で定められた要介護状態になった場合、一時金や年金が支払われます。

公的介護保険を使えば、自己負担は原則1割(一定以上の所得がある場合は2割または3割負担)となるため、介護費用の多くは制度によってカバーされます。貯蓄や公的年金が一定以上ある場合には、民間介護保険の必要性が低い場合もあります。

一方、貯蓄や公的年金から介護費用を支払うのに不安がある人や、公的介護保険でカバーされない手厚い介護サービスを求める人などは、民間介護保険を検討するのも一つの方法です。

民間の医療保険や介護保険がご自身に必要か検討したい場合は、相談サービスの利用も選択肢の一つです。

民間医療保険と公的医療保険の違い

民間医療保険と公的医療保険の主な相違点は、以下のとおりです。

  • 加入条件
  • 給付や保障の内容

民間医療保険と公的医療保険の違いについて詳しく解説します。

加入条件の違い

日本は「国民皆保険制度」を採用しており、原則としてすべての国民に公的医療保険への加入が義務付けられています。それに対して、民間医療保険への加入は任意です。

公的医療保険では加入時の審査はなく、職業や勤務先などに応じて加入する制度が決まります。

一方、民間医療保険は、加入時に審査があるのが一般的です。既往症があったり危険な職業に就いていたりする場合は、加入できないケースや条件が付く場合があります。

保障内容の違い

公的医療保険の保障内容は、法律に基づいて決められています。民間医療保険では、保障内容をニーズに合わせて調整可能です。

民間医療保険を保障期間で分けると、保障が一生涯続く終身医療保険と一定期間で保障が終わる定期医療保険の2つがあります。

また、貯蓄性で分類することも可能です。掛け捨て型医療保険には基本的に貯蓄性がありません。貯蓄型医療保険であれば、契約から所定の年数を経過すると解約返戻金や還付金が受け取れる場合があります。

民間医療保険には、さまざまな特約が用意されていることがあります。主な特約は以下のとおりです。

  • 入院一時金特約
  • 先進医療特約
  • 三大疾病特約
  • がん診断給付金特約

民間医療保険には多様な商品があるため、自分がどのようなリスクに備えたいのかを事前に検討しておくことが重要です。

民間医療保険と公的医療保険の違いを踏まえた保険選びをしたい方は、相談窓口を利用しながら検討することもできます。

民間介護保険と公的介護保険の違い

民間介護保険と公的介護保険の間にも、さまざまな違いがあります。主な相違点は以下のとおりです。

  • 給付方法
  • 保障要件

以下で、給付方法と保障要件の違いについて解説します。

給付方法の違い

公的介護保険の給付方法は、原則として「現物給付」です。それに対し民間介護保険では「現金給付」が基本です。

現物給付とは、介護サービスそのものを提供する仕組みです。利用者は費用の一部のみを自己負担すれば、サービスを受けることができます。利用できる介護サービスは、要介護度によって異なります。

現金給付は、現金で一時金や年金が支払われる方式です。一時金や年金の使い道には、制限はありません。介護以外の用途に充てることも可能です。

保障要件の違い

公的介護保険の適用を受けて介護サービスを利用するには、要介護認定を受ける必要があります。

要支援1または2と認定された場合、受けられるのは「介護予防サービス」です。要介護1~5に認定された場合は、「介護サービス」が利用できます。

介護保険適用のサービスは、主に以下の3つに分類されます。

  • 居宅サービス
  • 施設サービス
  • 地域密着型サービス

居宅サービスには、訪問リハビリテーションや訪問入浴介護、短期入所生活介護(ショートステイ)などがあります。介護老人福祉施設や介護老人保健施設などへの入所が、施設サービスです。

地域密着型サービスには、訪問・通所型サービスや認知症対応型サービスなど、多様な内容があります。

民間介護保険の保障要件は、保険会社や保険商品によって異なります。主な要件は以下のとおりです。

  • 公的介護保険の要介護認定に連動するタイプ
  • 保険会社独自の基準で判定されるタイプ
  • 認知症と診断された場合に給付対象となるタイプ

保障要件の詳細は保険商品によって異なるため、保険会社などで確認することが大切です。

保険選びについて不安がある方は、相談窓口を利用しながら検討することもできます。

民間保険は公的保険と併用できる

公的医療保険と公的介護保険は、原則として併用できません。一方、民間医療保険と公的医療保険、民間介護保険と公的介護保険の併用は可能です。

民間保険は、公的保険ではカバーできない部分を補完することが主な目的の一つです。保険給付の対象外となっているサービスを利用したり、定められた限度額や回数を超えてサービスを使ったりしたい場合に、民間保険によって費用負担が軽減できる可能性があります。

民間保険に加入する場合には、保険料の負担が生じる点に注意が必要です。民間保険は保障内容を手厚くするほど、保険料も高額になる傾向があります。

保障内容や保障期間、保険料などを踏まえて、自分に合った商品を選択することが重要です。

民間保険がご自身に必要かどうかを知りたい方には、中立的な相談機関で確認する方法もあります。

医療保険と介護保険の違いをおさえ併用を検討しよう

医療保険と介護保険にはそれぞれ、公的保険と民間保険があります。公的保険は加入が義務付けられていますが、民間保険への加入は任意です。

医療・介護のいずれにおいても、公的保険の対象外となる治療やサービスがあります。公的保険が適用されない治療やサービスを利用する場合は全額自己負担となるため、費用が高額になる可能性があります。

民間保険に加入しておくことで、医療や介護で生じる経済的な負担を抑えられる可能性があります。医療保険と介護保険、公的保険と民間保険のそれぞれの違いを理解したうえで、併用するのも選択肢の一つです。

民間の医療保険や介護保険には、多くの商品があります。どの商品が自分のニーズに合っているのかわからないという場合は、相談窓口を利用しながら検討することもできます。