
保険料も価格改定の時代!FPに聞く、家計を守る保険の見直し術
【監修者プロフィール】
水野 崇(みずの たかし) 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 / CFP®認定者
水野総合FP事務所代表。東京理科大学理学部応用数学科卒業。相談業務のほか、執筆、講演、監修、取材協力、メディア出演など幅広く活動する独立系ファイナンシャルプランナー。日本FP協会「2021年FP広報センター」スタッフとして、全国から寄せられる「くらしとお金」に関する電話相談を1年間担当。中学・高校・大学・専門学校で金融経済教育に携わり、テレビ・ラジオ番組への出演・監修実績も多数。講演や企業研修にも登壇し、家計の見直しから資産形成、住宅ローン・不動産、保険選びまで、生活に直結するテーマを中立的な立場でわかりやすく発信している。
物価の上昇が続くなか、「一度、家計全体を見直したい」と考える方が増えています。食費や光熱費の節約に取り組んでいる方は多いかもしれませんが、実は見直し効果が大きいのは保険料をはじめとする「固定費」です。
さらに、火災保険や自動車保険では保険料の改定が相次いでおり、更新のたびに負担が増えたと感じる方もいるのではないでしょうか。
本記事では、1級FP技能士の水野崇氏に「保険料改定が続く時代における保険の見直し方」をQ&A形式で伺いました。「何から手をつければよいかわからない」という方でも実践できるチェックポイントとあわせて紹介します。
物価高で「家計の固定費」を見直す人が増えている

食費・光熱費だけではない、固定費見直しの中でも「保険」は重要な項目
家計の見直しというと食費や光熱費のような日常的な支出の節約が思い浮かびますが、これらは日々の工夫が必要なうえ、削減にも限界があります。一方、保険料や通信費、サブスクリプションサービスなど毎月一定額がかかる固定費は、一度見直すとその後も継続的に効果が続く項目です。
なかでも保険料は家計への影響が大きい固定費の一つとされています。生命保険文化センターの2024年度「生命保険に関する全国実態調査」によると、2人以上世帯の年間払込保険料は平均35.3万円にのぼります。月額に換算すると約2.9万円で、家計のなかでも大きな割合を占める支出項目であることがわかります。
固定費の例 | 月額の目安 | 見直しの手軽さ |
サブスクリプション | 1,000〜3,000円 | 不要なものを解約するだけ |
通信費(スマホ・ネット) | 5,000〜10,000円 | プラン変更・乗り換え |
保険料 | 10,000〜30,000円 | 内容の確認が必要だが効果大 |
※上記の月額目安は一般的な参考値です。
水野さん:「私のところでも、『一度、家計全体を見直したい』というご相談は増えています。中でも最近よく聞くのが、住宅ローンを含む固定費への不安です。住宅ローンは毎月続く大きな支出のため、金利上昇による返済負担増を心配される方が目立ちます。以前より増えたと感じるのは、2〜3%の物価上昇が続くことによる、現金価値の目減りリスクへの不安です。旅行やレジャーを控える、都市部では車を手放すなど、より大きな支出の見直しを考えるケースも見られます。そうした中で、保険料も固定費の一つとして見直し対象になっています。」
固定費の見直し、どこから手をつけると効果的か
固定費の見直しは「やめやすいもの」「一度の見直しで長期間効果が続くもの」から着手するのが鉄則です。
水野さん:「使っていないサブスクは家計の見直しの入口としてわかりやすく、月1,000円でも1年で1万2,000円、10年では12万円の差になります。自宅の通信環境も効果が出やすい項目です。保険料も節約効果は期待できますが、内容が複雑な場合や、年齢や健康状態によっては新たな生命保険・医療保険に入りにくくなることもあるため、後回しにされがちです。まずは手をつけやすい固定費から着手し、その延長線上で保険も整理していくのが現実的です。」
保険料改定の実態──何がどれだけ上がっているのか

火災保険・自動車保険で相次ぐ保険料の改定
近年、とくに家計への影響が大きいのが火災保険と自動車保険の保険料改定です。
火災保険では、2023年に住宅総合保険の参考純率が全国平均で13.0%引き上げられ、2024年10月に各社で保険料の見直しが行われました。ここ10年で保険料の改定が続いており、契約条件や更新時期によっては、更新時の保険料が10年前の2倍以上になったケースも見られます。
自動車保険も、2024年に参考純率が平均5.7%引き上げられました。2026年1月には大手3社で6〜7.5%程度の引き上げが実施されています。
保険の種類 | 改定時期 | 改定幅の目安 |
火災保険 | 2024年10月〜 | 参考純率 全国平均+13.0% |
自動車保険 | 2026年1月〜 | 大手で6〜7.5%程度 |
改定の背景と主な要因
保険料が改定される背景には、次のような要因があるとされます。
水野さん:「いずれも、自然災害の増加に加え、住宅修理費や建築資材、車の部品代や工賃の上昇などが影響しています。住まいや車に関する保険は、更新時に家計への影響を実感しやすい代表的な保険です。」
保険料の改定について不安がある場合や、今の補償内容が自分に合っているか確認したい場合は、ファイナンシャルプランナーに相談しながら整理する方法もあります。
そもそも「保険の見直し」とは?解約だけが見直しではない

見直し=解約ではない。今の契約を活かす方法もある
「保険を見直す」と聞くと、「今の保険を解約して新しい保険に入り直すこと」をイメージする方は少なくありません。しかし、見直しの方法はそれだけではありません。
水野さん:「特約を外す、保障額を調整する、足りない保障だけを加えるなど、今の契約を活かしながら整える方法もあります。まずは、『何のための備えか』『いつまで必要か』『今の家族構成や家計に合っているか』を確認することが出発点です。見直しは『解約』ではなく、『今の自分に合う形に整えること』と考えると、気持ちのハードルも下がるのではないでしょうか。」
やってはいけない3つの見直しパターン
保険料の改定をきっかけに慌てて行動すると、結果として不利になる場合があります。とくに注意したいのが以下の3つです。
やってはいけないこと | 起こりうるリスク |
新しい保険の保障開始前に今の契約を解約する | 保障の空白期間が生じ、万一のときに備えがない状態になる |
保険料の安さだけで選び直す | 必要な保障まで薄くなり、いざというときに十分な保険金が受け取れない可能性がある |
健康状態の変化を考慮せず乗り換える | 年齢や通院歴によっては、以前と同じ条件で加入できない場合がある |
水野さん:「やってはいけない見直し方として多いのが、新しい保険の保障が始まる前に今の契約を解約してしまうことです。例えば、がん保険には一般的に90日の待機期間があり、その間に診断確定されても保障対象外となることがあります。保険の見直しでは、先に解約しない、安さだけで決めない、健康状態の変化も踏まえて判断する。この3点を押さえたうえで、保障がいつから始まるかを確認しておくことが大切です。」
「自分の場合はどう見直せばよいのか」と迷う場合は、専門家の視点を取り入れることで判断がしやすくなります。
保険料を抑える3つのポイント

保険の内容は維持しつつ、保険料の負担を軽くする方法は複数あります。ここでは、すぐに実践しやすい3つのコツを紹介します。
① 払込方法・免責金額を見直す
水野さん:「いきなり保障・補償を削るのではなく、まずは『払込方法』『免責金額』『重複している保険』をチェックしましょう。払込方法は、月払いより年払いや半年払いのほうが総額を抑えやすいのが一般的です。火災保険や自動車保険では、免責金額の見直しが保険料の軽減につながることもあります。」
払込方法の変更は手続きだけで完了するため、保険内容を変えずに総支払額を抑えられる手軽な方法です。
② 公的制度でカバーできる部分を整理する
民間保険で備えるべき範囲を考えるうえで、公的制度のカバー範囲を把握しておくことは重要とされています。
水野さん:「意外と見落とされがちなのが、公的制度でも医療費や遺族の生活費の一部がカバーされることです。例えば医療費は、高額療養費制度により1ヶ月の自己負担額に上限があり、70歳未満で年収約370万〜約770万円の方なら、自己負担限度額は8万円台前半が基本です。死亡保障についても、家族構成や働き方によっては、遺族基礎年金や遺族厚生年金の対象となり、その分、民間の死亡保障を抑えられる場合があります。」
公的制度 | カバー範囲 | 民間保険との関係 |
高額療養費制度 | 1ヶ月の保険適用の医療費自己負担額に上限を設定 | 医療保険の入院日額を過剰に設定していないか確認 |
遺族基礎年金・遺族厚生年金 | 一定の要件を満たす遺族が生活費の一部を受け取れる | 死亡保障額を、公的年金で受け取れる分を差し引いて設計 |
傷病手当金(会社員) | 病気・ケガで働けないとき、給与の約2/3を受け取れる | 就業不能保険の必要性を検討する際の判断材料 |
まずは公的制度でカバーされる範囲を確認し、不足分を民間保険で補うという順番で考えることがポイントです。また、公的制度は近年見直しが続いており、最新情報の確認が欠かせません。
③ 重複している保険をチェックする
水野さん:「会社員の方は、公的保障も踏まえ、民間保険で備えが重なっていないかを見直す余地があります。住まいの保険では家族構成の変化に応じて家財保険の保険金額や補償範囲を、車の保険では運転者年齢条件を見直せる場合があります。個人賠償責任保険などの特約が重複しているケースもあります。必要な備えまで削るのではなく、保障・補償の重複や支払い方を整えて、保険料の無駄を省くことがポイントです。」
保険料を抑える方法はわかっても、自分の契約でどこに無駄があるのかを見つけるのは難しい場合があります。
【セルフチェック】あなたの保険、見直し時かも?

今日からできる5つのチェックポイント
「見直しが必要かもしれない」と感じたら、まずは手元の保険証券や契約内容のお知らせを見ながら、以下のポイントを確認してみましょう。
水野さん:「保険加入当時と現在とで、生活環境が変わっていないかをまず確認してみましょう。結婚、出産、住宅購入、転職、子どもの独立などがあれば、必要な保障の内容や金額も変わっている可能性があります。似たような保障や特約が重なっていないかのチェックも大切です。同じ名前の特約でも、加入時期や商品が違えば、保障範囲や受け取れる条件が変わることがあります。」
セルフチェックリスト
□ 加入時からライフステージが変わっていないか(結婚・出産・住宅購入・転職・子どもの独立など)
□ 同じような保障や特約が複数の契約で重なっていないか
□ 定期保険の場合、更新時期はいつか
□ 付いている特約が現在の自分に合っているか
□ 保険証券や契約内容を最後に確認したのはいつか
世帯タイプ別、見直しの優先順位
世帯構成やライフステージによって、重点的に見直すべきポイントは異なります。
水野さん:「独身の方であれば、大きな死亡保障の必要性は比較的低いため、病気やケガで働けなくなったときの生活費や医療費への備えを重視したいところです。共働き夫婦は、住宅ローンを組んでいる場合、団信で返済への備えができていれば、民間の死亡保障を軽めにできることもあります。子育て世帯では、定期保険などで死亡保障を厚めに確保したい場面が多いでしょう。さらに、シニア世帯では、相続対策の観点から死亡保障の必要性が高まることがあります。子どもの独立後や住宅ローン残高が減った後は、保険を見直すよい機会です。」
世帯タイプ | 重視したい保障 | 見直し余地がある保障 |
独身 | 医療費・就業不能への備え | 高額な死亡保障 |
共働き夫婦 | それぞれの医療保障 | 死亡保障(団信がある場合) |
子育て世帯 | 死亡保障(定期保険など) | 子どもの独立後に再検討 |
シニア世帯 | 医療・介護への備え | 必要性が下がった死亡保障の縮小 |
転職・独立も見直しのタイミング
ライフステージの変化は結婚や出産だけではありません。働き方が変わるタイミングも、保険を見直す重要な機会です。
水野さん:「転職・昇進・独立なども、保険を見直す大きなきっかけになります。働き方が変わると、公的保障や勤務先の制度も変わることがあるからです。例えば会社員は、健康保険や福利厚生で一定程度カバーされますが、独立して自営業・フリーランスになると、その前提自体が変わります。任意継続の健康保険は最長2年加入できますが、傷病手当金などは原則として新たに支給されません。保険は『一度入ったら終わり』ではなく、働き方や収入が変わるたびに、役割を見直していく必要があります。」
自分のライフステージや世帯構成に合った保障の形を考えたいときは、専門家と一緒に整理することで、優先順位が明確になります。
改定時代の「保険との付き合い方」

物価高や保険料の改定が続くなか、保険の見直しは家計防衛の一つの方法です。本記事のポイントを振り返ります。
- 固定費の見直しは「保険料」が重要な見直し対象:年間平均35.3万円と家計への影響が大きく、一度の見直しで長期的な効果が期待できる
- 見直し=解約ではない:特約の整理、保険内容の調整、公的制度との組み合わせなど、今の契約を活かす方法がある
- あわてず、3つのNGを避ける:保障の空白を作らない、安さだけで選ばない、新しい保険がいつから始まるかを確認する
水野さんからのメッセージ:「保険を見直したいと思っても、なかなか最初の一歩が踏み出せない方は少なくありません。内容が難しく感じられますし、『今の保険の内容を変えて本当にこれでいいのだろうか』と不安になるのも自然なことです。だからこそ、最初からすべてを理解しようとしなくて問題ありません。
まずは保険証券を手元に集めて、『何のために入っているのか』『これから先も必要か』を見てみるだけでも、十分なスタートになります。保険は、安ければよいというものでも、入っているだけで安心できるものでもありません。今の暮らしだけでなく、将来への備えも含めて、自分に合った役割を持っているかどうかが大切です。
迷うところがあれば、専門家と一緒に整理するだけでも、気持ちはずいぶん軽くなります。焦らず、ご自身やご家族にとって納得できる形を、少しずつ見つけていただければと思います。」
何から手をつけるべきか迷ったときは、ファイナンシャルプランナーに相談しながら整理してみるのも一つの方法です。